700マガジン
フットゴルフワールドカップ ~その7~
2022.04.09
日本から西に遥か12,000キロ。
どこまでも澄んだ青い空。
「神の国」を意味する美しい古都マラケシュで3年前、そんな青い空の色に溶け込むような栄光の青い鎧をまとった22名の戦士たちが戦った軌跡があります。
第3回フットゴルフワールドカップ 2018モロッコ大会。
日本フットゴルフ界にとって2回目となる夢の舞台です。
2018年12月9日(日)から12月16日(日)の8日間に渡る大会の中で37か国503名の選手たちが個人、団体の各カテゴリーで激闘を繰り広げたこの大会。
前回お伝えした通り、男子個人の部の国別順位9位で出場した団体戦で日本代表は初戦でヨーロッパの強豪スロバキアと戦い、3対4の僅差で敗れました。
団体戦の激闘が蘇る フットゴルフワールドカップ~その6~はこちら
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フットゴルフワールドカップ ~その6~ – セブンハンドレッドクラブ (700c.jp)
ワールドカップで戦った初めての団体戦は日本代表にとって苦い結果となりましたが、そこからは今後フットゴルフが大きく広がり、日本代表が団体戦で強くなるためのヒントが見えました。
そして今回はいよいよ人の数だけそれぞれのドラマが見える各カテゴリーの個人戦の激闘を追います。
ここで改めて選手たちの戦う舞台であるモロッコ大会が行われたコースに触れておきたいと思います。
今回、一般の部が行われたアルマーデンゴルフリゾートは、周りに別荘が立ち並ぶ他、場内に大きな貯水池のようなものがある為、18Hしかない割に面積は広大。しかも遠くにはアトラス山脈が一望できる絶景で、日本には絶対にない雰囲気のコースでした。過去にはヨーロピアンツアーやフランスチャンピオンシップなどのプロゴルフツアーが開催されたこともある由緒正しき名門コースですが、芝は、OUTとINで若干異なっているようで、暖地型としては一般的なバミューダグラスとティフトンがそれぞれで生えているように見えました。また、芝が薄く、歩くと地面の突き返しを感じるほどだったので、ボールは良く転がりました。ちなみにOUTがAlアルマーデン2、INがアルマーデン1と名づけられ、それぞれでフットゴルフコース18Hずつのセッティングがなされていました。
<アルマーデン1>
アルマーデンゴルフリゾートのINコースを使ってセッティングされたフットゴルフコース。大部分をティフトン芝が占めていましたが、OUTコースと比べて芝が厚く綺麗に生え揃っていた為、団体戦、個人戦共に最終日のラウンドに使われるなど、主に今大会のメインコースとして使用されました。
フットゴルフコースとしては全体的に飛距離はやや短めでしたが、代わりにグリーン周りが極端に難しくなっていた為、トップ選手もスコアを崩す場面が多々見られました。特徴的だったのは、フットゴルフのカップがゴルフのグリーン奥のカラーに切られていて、必ずゴルフのグリーン上を通してカップを狙わなければいけなくなっていたこと。ヨーロッパのフットゴルフシーンでは当たり前に行われているセッティングなのですが、日本国内では絶対にできないセッティングなので、慣れない日本人選手にはハンデとなってしまっていました。また、グリーンを使用しない位置にあるカップも、傾斜がきついフェアウェイやバンカーのすぐそばに切られていたりして、厳しいセッティングになっていました。このあたりは日本国内でも同様のセッティングにできると思うので、同じようなセッティングが増えてくれれば日本のフットゴルフのレベルアップにつながるのではないでしょうか。
<アルマーデン2>
アルマーデンゴルフリゾートのOUTコースを使ってセッティングされたフットゴルフコース。アルマーデン1の大部分をティフトン芝が占めていたのに対し、こちらはバミューダグラスが大半を占めていましたが、アルマーデン1と比べて芝が薄かった為にボールが良く転がりました。距離もこちらのほうが短かった為、カップの位置をアルマーデン1よりも難しくすることで二つのコースのバランスを取っていたようです。
※footgolfweb.jpより引用
前回大会のアルゼンチン大会同様に日本では普段なかなか経験できない条件が揃ったコースセッティングです。ゴルフのグリーンのそばに設置されたカップ。ボールが止まりにくくただでさえ繊細なタッチが求められる。しかもカップを外すと奥が下っていてボールは容赦なくカップから離れていく。加えてカップの側はもちろん、要所要所にある様々なバンカーがさらに難易度を増す。そんな容赦ない舞台が選手たちを待ち受けます。
さあ、青い戦士たちの戦いはいかに。その激闘の様子を振り返りましょう。
まずはこの大会から新設された2つのカテゴリーから振り返っていきましょう。
まずは男子シニアの部からです。
シニアの部は4ラウンドの合計スコアで優勝を争う方式であり、第3ラウンド終了後、トップ25のみ第4ラウンド進出(予選落ち選手も最終日のプレーは可能)となります。
大塚有尋選手、工藤誠司選手の2名が出場しました。
第3ラウンド終了時の結果が工藤選手55位(3ラウンドの合計スコア+11)、大塚選手が59位タイ(3ラウンドの合計スコア+20)と残念ながら最終第4ラウンドへの進出はなりませんでした。
「国際大会としての雰囲気、気候、流れている時間などは最高でした。海外の選手と交流しやすいスポーツで、さらに日本代表女子選手に丸山桂里奈さんが居たので大会自体はいろんな意味でとても楽しめたのですが、シニアと女子が男子と別々のゴルフ場での開催で、さらに団体戦も男子(一般の部)のみだったので寂しく消化不良でした。
最終日はせめてシニアでアジアで1位という目標も1打差で追いつけず満足のいく結果でなかったので、もっとフットゴルフというものを知っていれば良かったと思ったし、次(日本開催)こそは結果を出すと決めました。
一緒にラウンドしたアルゼンチンやハンガリー、スロバキアの選手はフットゴルフを知り尽くしていました。」(工藤誠司選手/2018年ワールドカップ出場)
工藤誠司選手
「初日はラウンドを共にしたフランス人選手の攻略法を参考にしながら、2日目への手応えを感じ終えました。翌日は家族が応援に駆けつけてくれました。しかし、家族の存在でアドレナリンが出過ぎたのか、冷静なプレーを忘れて、早いゴルフグリーンへの対応を怠りスコアを落としてしまいました。メンタルコントロールの未熟さを痛感しました。」(大塚有尋選手/2018年ワールドカップ出場)
左から2人目:大塚有尋選手
フットゴルフワールドカップ~その5~でも紹介しましたが、工藤選手は第三回フットゴルフワールドカップにシニアカテゴリーができたと聞き「もしかすればチャンス!」と思い、そして「50歳(という年齢)になってからでも狙えるものがある」とモチベーションとなったことを話してくださいました。
シニアの選手の皆さんは、一般カテゴリーの選手よりもさらに競技者として「自分の体との戦い」を強いられます。そこにはフットゴルフのプレーの時だけでなく、普段の生活からの絶え間ない努力があることでしょう。それがあって初めて真剣勝負の場で戦うことを許され、日本代表への道が拓けるのです。
そうした努力が実を結び、工藤選手が2017年、大塚選手が2018年とともにシニアの日本チャンピオンに輝いたのをはじめ、アジアカップ等の国際大会に出場するなどの活躍を見せてきました。
お二人は最終ラウンドには進出出来なかった悔しさと同じくらいのそれまでの日々を振り返っての充実感に包まれたことでしょう。
また、大塚選手はこんなお話も聞かせてくれました。
「約10日間の滞在中、競技のオフの日を利用して旧市内のバザールや歴史旧跡を訪れることができました。モロッコ料理、有名なミントティーやスイーツ、そして現地の音楽も楽しむことができました。モロッコは2回目でしたが、あらためて素晴らしい文化に触れる機会を持てたのもフットゴルフのおかげです。将来、日本で大会が開催された時、海外の選手たちにも日本の文化を堪能していただきたいと願っています。夕暮れ、日が落ちて、アトラス山脈が遠くに霞む頃。街中にアザーン(祈りの呼びかけ)が響き渡り、バラ色の街並みに明かりが灯り始める。コースから宿へ戻る車中からの眺めは今も忘れられません。海外の選手たちは日本でどんな風景に感動してくれるのか、今から楽しみです。」
人生経験豊かなシニア選手である大塚選手ならではのお話です。
ワールドカップならではの異文化とのふれあい。それにより心も体も豊かになっていくことでしょう。
そうした経験が真剣勝負の舞台での心の余裕を生むことにつながるのかもしれません。
シニアにはシニアの楽しみ方がきっとある。
フットゴルフをさらに楽しく、豊かな文化にするものはシニアの皆さんがプレーし、楽しむ環境が広がることなのかもしれません。
次に女子の部を振り返ります。
女子の部もシニアの部と同様、4ラウンドの合計スコアで優勝を争う方式であり、第3ラウンド終了後、トップ25のみ第4ラウンド進出(予選落ち選手も最終日のプレーは可能)となります。
前田春香選手、阿漕洋子選手、丸山桂里奈選手選手の3名が出場しました。
第3ラウンド終了時点で前田選手が15位タイ(+20)、阿漕選手が19位タイ(+22)と見事に最終ラウンドへの進出を果たしました。
そして最終第4ラウンドを終えての最終スコアは前田選手が16位タイ(+27)、阿漕選手が18位タイ(+30)となり栄えあるトップ20入りという結果を残しました。
「世界トップ選手のレベルの高さや、海外コースでの経験値の低さを痛感しました。コースマネジメントやキックの技術など足りないことばかりでしたが、一方で、真剣勝負の中で、フットゴルフ自体を楽しいと感じることができました。
また、フットゴルフをしていなければ出会えなかったであろう世界中のプレーヤーと友達、仲間になれたこともW杯という国際大会ならではだと感じました。」(前田春香選手/2018年ワールドカップ出場)
前田春香選手
「私は2018年4月の関西リーグに参加した際に安村(翼)選手と出会い、声を掛けて頂いたのがきっかけで日本代表を目指しジャパンツアーに出場する様になりました。2018年は7月にアジアカップ 、12月にワールドカップのあるフットゴルフイヤーだったのです。
日本代表を目指す選手達と共にプレー出来る事がとても刺激的でした。
9月に行われたインターナショナル大会では女王ソフィーブラウン選手と優勝争いが出来、3打差で負けてしまいましたが3日間対等に戦えた事で自信に繋がりました。
12月のワールドカップメンバーに選出して頂けた時には世界一を目指せる事、世界のトッププレイヤーと戦えることに高揚感が高まった事を覚えています。
今大会から新設された女子カテゴリー。
女子初の世界一を目指し挑んだ個人戦初日。
キックの飛距離、アプローチやパットの精度の全てが世界のトップ選手より劣っている事を実感しました。また、海外選手にはキャディがついており、常に二人三脚で戦略を練り情報や感情を共有している姿はとても羨ましく感じました。その中で私は緊張感と大会の雰囲気に飲み込まれ、18H数時間のラウンドを一人で闘い抜く事が本当に孤独で辛く、精神的にも追い込まれた状況の中ラウンドを終えるだけで精一杯でした。途中日本のスタッフが応援に駆けつけてくれた時には安心感から涙が止まりませんでした。キャディ以外は帯同も会話も出来ない為離れた距離からではありますが見守って下さっていたスタッフの方々、最終日にはキャディをして下さった協会の田村さんには本当に感謝しています。とても心強かったです。ありがとうございました!」(阿漕洋子選手/2018年ワールドカップ出場)
阿漕洋子選手
丸山桂里奈選手はこの大会が自身2度目のフットゴルフのラウンドと不慣れな中、いきなりの大舞台で第1ラウンド終了時点では17位タイ(+7)と好成績を残し、さすがはなでしこジャパンでサッカーワールドカップ世界一を果たしたアスリートの貫禄を見せてくれました。
また、松浦新平日本フットゴルフ協会会長によると、丸山選手は大会当時、利き足である右足の膝の痛みに悩まされ、多くの場面で利き足ではない左足でキックをしながらのラウンドだったとのことです。それでも少しでもいいスコアを残そうとラウンド終了後は瀧田トレーナーにところへ向かい、コンディション調整に励んでいたそうです。
スケジュールにより大会途中で帰国しなければならない忙しさ。しかも万全ではないコンディション。そんな状況にも関わらず丸山選手がこの大会に臨んだ理由は「日本のため」「フットゴルフのため」そんな思いがあったに違いありません。
女子の部優勝のソフィ・ブラウン選手
この大会女子優勝イギリスのソフィ・ブラウン選手のスコアは-6。世界のトップの選手でも簡単にスコアを伸ばせない中で前田選手、阿漕選手はトップ20入りを果たしました。
両選手にしてもサッカー経験は豊富ながらフットゴルフの競技歴は1年ほどと短い期間ながらジャパンオープンで頭角を現し、この年のアジアカップにも選出されるなど活躍が光る中でのワールドカップとなりました。
世界の舞台でのトップ20入り。それでも結果には決して満足はしていないことと思いますが、この大会の翌年に開催されたアジアカップ2019女子の部において前田選手は初優勝、阿漕選手もアジアカップ2大会連続の準優勝と国際舞台での活躍を果たします。そこにはきっとこのモロッコでの様々な経験が活かされたことでしょう。
松浦新平会長は「フットゴルフで日本人選手が世界の頂点に立つのは男子よりも女子の方が早いかもしれない」と言います。
この大会では優勝したソフィ・ブラウン選手など男子顔負けのキック力を誇りフィジカルの差を感じさせる選手がいることは事実ですが、全体的に見ればフィジカルの差は大きく感じず、日本人選手にも戦えている雰囲気を感じたということです。
なでしこジャパンが女子サッカーワールドカップで世界一に輝いたようにいつか日本人女子選手がワールドカップで優勝する日が来ることを信じ、願います。
左から:瀧田知良日本フットゴルフ協会オフィシャルトレーナー、丸山桂里奈選手、阿漕洋子選手、前田春香選手
そしていよいよ男子一般個人の部を振り返ります。
男子一般個人の部で最初の関門となる第2ラウンドまでの結果で一次予選突破を果たしたのは出場14名の選手のうち8名。残念ながら6名の選手が予選通過を果たすことが出来ませんでした。
「初日同組選手の素晴らしいプレーに焦りを感じ、いい流れに乗れなかったが、2日目以降は少しづつスコアを伸ばせた。初日のプレーが悔やまれるが、初日同組のDomenech選手は見事トップ10入り、二日目同組Alvarez選手の強気で華麗なhole in oneなどのプレーに刺激を受けました。」(山縣祐人選手)
「W杯独特の雰囲気の中スタートした個人戦でしたが、初日で大きく出遅れてしまい、自滅する形でスコアをぼろぼろと落とし、予選敗退という大変残念な結果となってしまいました。」(桑田寛之選手)
右から2人目:山縣祐人選手 左隣は八谷紘希選手 左から3人目:桑田寛之選手 右隣は鈴木秀成選手
「前回のWorld Cupアルゼンチン大会では予選敗退をしてしまい、まずは予選突破を目標に戦っていたが、同組のトップ選手を意識したのが災いし、数ホール大きく崩してしまい、予選敗退してしまいました。」(田中雄太選手)
田中雄太選手
「大会初日の出遅れを取り返す為、スタートから攻めていくことを心に誓ってスタートした個人戦二日目でしたが、スタートホールで+13の大トラブル。
この日は風が強かったのですが、スタートしたばかりでその風がうまく読みきれてきれておらず、大きなミスへと繋がってしまいました。
後から知ったのですが、ゴルフにはないアンプレアブルというちょっと不思議なルールがあり、1打ペナルティを払えば球の行方に関係なく、同じところから蹴り直しができたのですが、知らなかった為にグリーン回りを行ったり来たりしてしまいました。
2mのパーパットからやり直せばダボで済んでいたかもしれませんが、ルールを知らない自分のミスだから致し方ありません。
その後は冷静さを取り戻し、残りの17ホールは+2でラウンド。
途中ホールで同じように強風に煽られたボールがあらぬところに転がり難しいバンカーに落ちるピンチがありましたが、今度はしっかりとアンプレアブルを宣言してダボで収めました。
結局この日は+15。
初日と合わせて+23、318位タイで予選通過ならずでした。」(軍司和久選手/2018年ワールドカップ出場)
軍司和久選手
フットゴルフワールドカップ~その5~でもお伝えした通り、軍司選手は22歳の若さでがんに侵され余命半年と宣告される深刻な状態の中から必死の闘病生活を経て一命をとりとめました。その後も後遺症が残る中で大好きなサッカーをプレーする事をあきらめなければならず、スポーツへの希望を失いかけていた時にフットゴルフと出会いました。
軍司選手のモロッコでの戦いには“文字通りの”「自分との戦い」がありました。
「努力の甲斐もあって、モロッコでは、がんになって15年経った中で一番良いキックができたし、そこから見える景色は、今までとは全く違うものでした。でも、だからこそ見えたものもたくさんありました。世界への挑戦は、自分が想像していたよりずっと厳しく、そして険しいものでした。パットのたびに足が震えました。キックのたびに呼吸は乱れ、心拍数が上昇しました。あんなに辛いフットゴルフは、初めてでした。
上を目指せば目指すほど、その高みに気づく。当たり前のことですが、今までは闇雲に、目指すべき目標もわからず、ただただガムシャラに突っ走っていただけだったんだと、大事なワールドカップの舞台に立って初めて気づかされることになりました。こんなにも自分の無力さを痛感する大会になるとは思ってもみませんでした。それでも、得たものもたくさんありました。思っていたよりも世界の頂点は遠くなかったし、日本の成長は世界のそれよりも早いことを実感できました。日本の技術は、日本の魂は、着実に世界に通用していました。唯一、結果を残す為に足りなかったのは、経験だと思います。大舞台、海外遠征、複数日競技、ムービングサンデー、追われるプレッシャー、団体戦、外国人からの執拗な英語攻撃(笑)などなど。これらは、この先フットゴルフを続けていくならば必ず乗り越えなければいけない壁です。一つ一つ丁寧に克服していくしかありませんが、でも、経験すれば、必ず克服できるとも思っています。
15年前、がんになって医者から「治ったら健常者として生活はできるけど、サッカーや運動を今まで通りにやるのは厳しい」と言われたとき、いっそのこと障害者にして欲しい、パラリンピックに出られる身体にして欲しいと思ったこともあります。それほどまでに、才能もない、努力もできない、自分のような人間ですら、スポーツの舞台から遠ざかることはとても簡単には受け入れられるものではなかったのです。でも、フットゴルフという競技が生まれ、ワールドカップという舞台ができたことで、健常者と障害者の狭間に取り残された自分のような人間が、再び競技スポーツの世界に戻り、世界を目指せるようになりました。そして、フットゴルフを通じて改めて、スポーツの素晴らしさに気づくようになりました。
ありがとう、フットゴルフ。
夢のような二週間、本当に楽しかった。またあの舞台に立ちたい、と心の底から思います。ワールドカップが終わったらゆっくり今後について考えようと思っていましたが、今なら自信を持って言えます。カップに入ったボールを拾おうとしゃがむたび、貧血で立ちくらみがします。ラウンド前には最低二日はトレーニングをしないと18ホール回りきれないほど体力は落ちています。それでも、この素晴らしいスポーツを、少しでも広め、その楽しさを分かち合いたい。そして、日本を世界一のフットゴルフ大国にしたい。
だから僕は、これからも「一生フットゴルフします!」」
※軍司和久選手のnoteより引用
フットゴルフワールドカップ2018回顧録⑦~総括~|軍司 和久|広告会社スポーツビジネス担当|フットゴルフW杯2018日本代表|note
軍司選手のモロッコ大会での結果は満足のいくものではなかったかもしれません。ただ、軍司選手はそこに「希望」を見出しました。
フットゴルフだからこそ見出せる「希望」。改めてフットゴルフの持つ力の大きさを感じます。
そして第3ラウンド終了時にトップ100に入り最終ラウンドに進出を果たした選手は8名中3名。5名の選手がここで涙を飲むことになりました。
「ついに悲願のワールドカップ出場です!2日目終わって4アンダーの13位、最高のスタートでしたが3日目に+13を叩き予選カット。残酷な終わり方でしたが、不思議と後悔はありませんでした。そこまでの2年も含め良く頑張ったなと。世界で戦えることも、自身に足りないものも良く理解できました。」(小林隼人選手/2018年ワールドカップ出場)
小林隼人選手
「ワールドカップのコースは日本では味わえない36ホール。平均200ヤードのパー4、激しいアンジュレーション、カップはフェアウェイやゴルフグリーンを通した奥で、速いグリーン周り。当時パッティングはインサイドがメインで、当ててフォロースルーがない蹴り方だったので、特に弱の調整が上手くいかず苦しみました。
これを期にパッティングを見直し、トゥキックで強弱をつけられる蹴り方や、インサイドで優しく下から上に擦るような蹴り方を練習しました。
個人初日は日本のトップ選手トミー(冨沢選手)と同組でした。トミーよりスコアが良かったため、今思うと変な勘違いをしていた気がします。
二日間トータルであっさり逆転されました。
比較しても意味がない事は分かっていたはずなのに。
2日間トータル11オーバーで、ギリギリ予選通過(ラインは12オーバー)して迎えた3日目。アンダーで回らないと最終日に進めない状況だったので攻めしか選択肢が無かったんですが、難コースで大崩れしたくない、そして日本で攻めのプレーをしてこなかったメンタリティから攻めきれず…
どうせ予選落ちになるならと、やり切るメンタルを持つ大切さを実感しました。」(新井晋選手)
新井晋選手
「モロッコワールドカップでは、3つのコースで大会が行われ、一般カテゴリーはALMAADEN(アルマーデン)の2コース(36ホール)で大会を開催しました。
初日、2日目と、1日ずつ2つのコースでプレーするというレギュレーションは、身体的にも、精神的にも非常にタフでした。
自身2度目となるワールドカップ、他にもアジアカップにも出場し、経験を積んできた!戦える!という自信を持っていました。
しかし、上位に食い込む!と息巻いていた自分が恥ずかしくなるほど、さらに世界との差を痛感した大会となりました。
日本では経験したことのないような、カップ位置、バンカーサイズ(高さ3m近くあるようなバンカーも)に大苦戦。
カップを狙いすぎて、外すと傾斜でバンカーまで落ちてしまいPARであがることが難しいということばかりで、たった2mのパットに不安や恐怖を感じ、今までやってきたフットゴルフの自信が崩れてくような感覚でした。
ROUND2 終了時点 157位という状況に、ROUND3では、”攻めるしかない”という一択でした。
しかし、ROUND3 終了時点 193位。結果的には順位も落とし、ROUND3敗退となりました。
私自身は、この翌年から試合を海外中心に出場するようになりました。」(安村翼選手/2016年・2018年ワールドカップ出場)
一番左:安村翼選手 右から2人目は新井晋選手
ここまでで11名の選手が最終ラウンドへの進出を果たせなかったことになります。言うまでもなく彼らは日本のトップレベルの実力を持ち、アジアカップをはじめ国際舞台でも活躍を残した実績も持っています。この大会でも最終的に大会を通じた各国上位4名のスコアの合計で表す国別ランクでは10位という結果でした。これはサッカー大国のブラジル、メキシコよりも上位につけるものであり、日本フットゴルフ全体の強さを示すものです。
そんな高い実力を持つ選手たちでも立つことが許されない至高の舞台、最終ラウンド。
トップ100のみが立てる栄光の舞台です。そんな栄えある舞台をラウンドをプレーした3名の選手。
それぞれにお話をお聞きしました。
「ファイナルラウンドまで進出することは最低限の目標としておりましたが、日本代表の他の選手が予想以上にファイナル進出が出来ていないことに驚きを隠せませんでした。個人的にワールドカップは2回目の経験であり、1回目のアルゼンチンワールドカップでの経験や1打の重みを理解しているからこそ丁寧なゲーム運びが出来たと考えております。実際、個人戦3日目終了時点であと1打多ければファイナル進出が出来ていなかった事は鮮明に覚えております。また、当時働いていた会社にはスポンサーになって頂き、「ファイナル進出が最低限の目標」と明言しておりましたので、結果には満足しておりませんが、最低限の目標は達成でき良かったと思っております。」(八谷紘希選手) ※八谷選手の最終順位は86位タイ(+12)
八谷紘希選手
「予選ラウンドの戦いは海外特有の転がるフェアウェイとカップ周りに苦戦し自分が思い描いていたように戦えず、最低限のスコアでギリギリ運も良く通過できたのだと思います。それでもこのチャンスを通過できなかった選手や日本で応援してくれている方々の力をもらい、世界の強豪選手たちの中で挑戦することを忘れないようにとチャレンジャーとして常に攻めの姿勢で決勝ラウンドに向かっていきました。その結果攻めの姿勢を続けてばかりではダメだというフットゴルフの真髄に触れることができました。案の定、決勝では裏目裏目にしかプレーがでませんでした。」(冨沢和未選手)※冨沢選手の最終順位は73位タイ(+10)
冨沢和未選手
左から2人目:冨沢和未選手 右から2人目は新井晋選手
「最終的な20位という結果には満足はしていませんが、日本のフットゴルフ界の為に1つでも上の順位で終えるぞという気持ちでプレーをしていましたし、共に決勝ラウンドを戦った八谷選手と冨沢選手ともそう誓い合いました。特に決勝ラウンドで大会期間中自己ベストの-4を出せたことについては自信を高める事に繋がっていると思います。」(鈴木秀成選手)
鈴木秀成選手
鈴木秀成選手の最終順位は20位。世界の名立たる選手が揃う中での20位です。前回アルゼンチン大会の個人戦日本人トップは冨沢選手の80位。鈴木選手自体も前回大会では117位という成績でしたので日本人選手としても鈴木選手個人としても大躍進の結果となりました。
鈴木選手の戦いぶりはほかの選手たちにも大きな歓喜をもたらしました。
「個人戦4日間競技では、結果に対する恐れなど、プレッシャーのなかギリギリな状態での試合が続きます。自分は3日目に脱落しましたが、ヒデが最後まで戦い抜き世界20位に入りました!試合後、「良くやりきった!」と心の底から称えたことを覚えてます。」(小林隼人選手)
そんなギリギリの状態の中で4日間を戦い抜いた鈴木選手。
「4日間のラウンドで最も印象に残っている、ターニングポイントだったと思うプレーはありますか?」という問いに対しては
「動画が残っているので余計に覚えているのですが、最終日のこのバンカーショットはよく覚えてます。
1打目をバンカーのかからないようにおきたかったのですがうまくいかず、案の定、2打目がバンカーに入ってしまいました。
映像だと分かりにくいのですが、チップで打ち出したカップの後ろは降っていて20-30メートル奥まで行ってしまう可能性がありました。これが入ってくれたので、最終日の-4というスコアにつながったのは間違いないですし、ターニングポイントになってますね!」
鈴木選手のこのバンカーショットは最終日の12番ホール。
残り6ホールのプレー、スコアに影響しかねない重要な場面での起死回生のバンカーショット。鈴木選手のトライが実を結んだ結果となりました。
この躍進の要因はどんなところにあったのでしょう。鈴木選手にお話を伺いました。
「(今まで経験した悔しい思いをバネにしたのか?それともそういうことを考えることもなく無心で戦ったのか?という問いに対して)
一言で言えば「無心」ですね。
ただ、無心というか「動じない」 って言う状態に近かったかもしれないです。
国際大会ともなると言葉も違うし、ルールで揉めたりすることもある。またコース難易度が高いため思わぬところでスコアを落とす事も十分に考えられる。それら想定しうる状況を想像して試合に臨める状態になっていた、と言うことが動じずにプレー出来た、ということかもしれません。
これは間違いなくアジアカップを含めた過去の国際大会での経験が大きいと思います。」
フットゴルフワールドカップ~その5~でもお伝えしたようにアジアカップ2018中国大会において鈴木選手は個人、団体とも準優勝という誇るべき結果でした。しかしそれは大事な場面で自らのミスによってスコアを落とす形での準優勝でした。
アジアカップ2018の激闘を振り返る
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フットゴルフワールドカップ ~その5~ – セブンハンドレッドクラブ (700c.jp)
悔しいはずがありません。そこには本人しか感じられない、他と比べようもない大きな失望があったことでしょう。
そのショックの大きさゆえ、ひょっとしたらそこから立ち直れない選手もいるかもしれません。鈴木選手自身、そうした葛藤を抱えていた時期があったと振り返ります。
しかし、鈴木選手はそうした思い出したくもないような経験をも受け入れて、活かしてこのワールドカップでの20位という結果を生み出しました。
素晴らしい結果となりました。
このモロッコ大会男子一般個人戦栄光のトップ3は
優勝:マティアス・ペローネ(アルゼンチン)
2位:ベンジャミン・クラーク(イギリス)
3位:ロベルト・アジャラ(アルゼンチン)
となりました。
マティアス・ペローネ選手(アルゼンチン)
ベンジャミン・クラーク選手(イギリス)
ロベルト・アジャラ選手(アルゼンチン)
彼らの強さはどんなところにあったのか。
選手の皆さんの声から読み解いていこうと思います。
「まだまだ浅はかな日本チームに対してベテランというべくこのスポーツを知り尽くしているなと感じました。例えるとプレーでスイッチを入れるところは入れ抜くところは抜くといったような駆け引きも上手かったですし、上位の選手や団体戦で勝ち抜く国の選手はもちろん運もあったりもするのでしょうけど、このスポーツに一人一人密接しているといった印象でした。そんな世界を目のあたりにし、もっともっと日本チームはこのスポーツに対して密接していかなければいけないと思いました。」(冨沢和未選手)
「あとから映像で見ても最終日のマティアス(ペローネ)の集中力は本当に凄かったです、確かTOPと2,3打差あっての最終日でしたが怒涛の追い上げを見せて優勝しました。」(鈴木秀成選手)
「ペローネ選手と個人戦初日同組でしたが、初日から本当に最高のパフォーマンスで最終日まで集中力もとても高かったです。その上で随所でスーパープレイもあり、完璧の出来だったと思います。まさにワールドチャンピオンでした!」(桑田寛之選手)
「ベンクラークとは個人戦2日目で同組でした。ついていけている感覚があるのに、少しずつスコアが離されていく。蹴る技術の他に、マネジメントや失敗のあとのリカバリーにも大きな差があると思いました。」(小林隼人選手)
「特にペローネ、クラーク選手はWorld Cup以前に他の世界大会で何度も顔を合わせ、非常に気心が知れた仲であり、大会の前後は非常に穏やかな性格ですが、大会中は鬼気迫る表情で、自分のすべてをかけて戦っていました。
最終日最終組では全ホール息を呑む最高の緊張感でプレーしていました。」(田中雄太選手)
「優勝のマティは小さい体でも戦える事を証明してくれました。特にパッティング技術には痺れました。ラインを的確に読み、そのラインへ正確に蹴れる技術の高さ、そして速いグリーンに対応した距離感はワールドチャンピオンに相応しいプレーでした。
ベンは常に世界トップを走り、優勝候補筆頭でしたが決勝まで行った団体戦にフル出場した疲れなども影響し、2位フィニッシュ。力強いティーキックは随所に見られ、意外とパッティングが上手い選手なんです笑。
ファビアンは2017年にアメリカの大会で一緒にラウンドしましたが、キック精度の高さはさすが元アルゼンチン代表。その精度はこの大会でも発揮され、そして本番に強いというか、最終日にスコアを伸ばし、最終18番で素晴らしいアプローチを見せて18番で逆転3位。」
(新井晋選手)
マティアス・ペローネ選手は身長160cmほど。
前回アルゼンチン大会優勝のクリスチャン・オテロ選手も同様に小柄で日本人と比較しても体格差は感じません。
もちろんキック力をはじめとした身体能力の差を持ち味にして世界のトップに君臨している選手は存在します。
ただ、マティアス・ペローネ選手やクリスチャン・オテロ選手の活躍を見ると身体能力だけがスコアの決定的な差ではないことが見えます。
日本代表が、日本選手が強くなるためには「世界のトップ選手との差」を克服しなければなりません。
ではその「差」とは何なのか? そして日本人選手が強くなるためにはどうすればいいのか?
モロッコ大会編の締めくくりはこのテーマについて掘り下げていきたいと思います。
「世界と日本の選手の差はどんなところにあると感じますか?」「世界と日本の選手に個(個性)の差を感じますか?」
こんな難しいテーマに答えていただきました。
貴重なコメントをご覧ください。
「ベン・クラークのように体が大きかったり、マティ(ペローネ)のように小さかったり、インサイドやトゥキックのパットの蹴り方の違いや、ルーティーンの違い、巻いたボールを蹴る選手、ストレート系を蹴る選手など、表面的な違いは諸々の面では見られます。
しかし、トッププレーヤーは一様に確かな技術と体力を持った上で、緻密な戦略を持ち、それを冷静(メンタルコントロールしながら)に実行することができています。
そして、優勝を争うようなトップトップの選手たちは、時としてリスクを取ってビッグプレーにチャレンジします。そのレベルを乗り越えないと世界一にはたどり着けないと言うことです。
個性を超えたところで、トッププレーヤーたちの、いわゆる心技体の充実は一様に高いレベルにあるのだと思います。」(大塚有尋選手)
「フットゴルフは基本「個」のスポーツなので、全てが「個」の差ですね。「個性」が必要だと思います。「個性」によってプレースタイルが決まり、キャラクタとなります。
世界のトップ選手はより強い個性を持ち、その強みを自身が理解してプレーに繋げていると感じます。プレー以外で目立つような個性も必要な側面は大いにありますが、結局どのスポーツも実力が伴わないと露出し続けられない以上、注目されないと思います
フットゴルフ界内だけで目立っても意味がない。プレー以外で目立つようなことは他の人に任せて、自分は「プレーにおける」個性を磨いていきます。
世界との差は個性よりも競争力や経験値で出ていると思います。」(新井晋選手)
「個の差は感じました。
サッカーと違って個人で毎ホールリスクを取りにいく作業が続く為技術的には勿論ですが、パット時のメンタルで「これを沈めれば勝てる」か「これを沈めなければ負ける」の違いがかなり作用するスポーツだと思います。
すなわち、世界のトップフットゴルフ選手は個として、まるでリスクを楽しんでいるかのように映ります。うまく言語化できませんが、文化、民族、人種の違いも関わってきている気もします。」(松浦新平日本フットゴルフ協会会長)
「僕が考える世界との差は、「フットゴルフ」というスポーツの捉え方、考え方が違っていたと感じました。
フットゴルフのコースマネージメントは、世界との差はないと思います。技術的にも日本人は、繊細でうまいと思います。
しかし、ミスしたらリカバリーして「PARであがる!」という思考があり、日本では”攻める”という考えがありすぎるのではないかと思います。
世界の上位選手は、1打1打、リスクとチャレンジを天秤にかけながら、チャンスが作れるまでは”守る”(PARであがる)という思考だと思いました。
そして、ここという場面での集中力、自分のペースでプレーする”わがまま”さは、見習う部分だと思いました。
日本人が攻めるという感覚は、日本で1dayの試合ばかりする弊害で、海外選手を見た時には最終日のプレーシーンと考えています!
トップ選手たちは、まずはボギーを打たない!リスクを取りにいくマネージメントはしない!という守りから入ります。
最終日になって攻めるというプレーが出てくるように感じます!
他の選手も技術的な差は無いと感じていると思います!
キック力は海外選手に劣りますが、それをキックの種類、技術でカバーできていると思います!
パットの正確さというより、射程圏内(自信)が広いと感じました!
それは環境の差、経験の差だと思ってます。
欧州では、(ゴルフの)グリーン上のプレーがOKであり、グリーン先のカラー・フェアウェイにカップがあるので、そこでのプレー経験値から射程圏内が広いのではないかと思います。
文化、環境が影響しているかもしれませんが、そこを差として考えていては、世界一には届かないと思ってます。」(安村翼選手)
非常に難しいテーマです。そんな難解なテーマの中で、世界と日本の「差」を物語るキーワードを残してくれました。
「メンタル」 「リスクへのチャレンジ」「“守る思考”」「自信」「競争力」「経験値」「複数日競技の戦い方」「文化・民族・人種の違い」
これらのキーワードを見たときにひとつ気付くことがあります。
「(ボールを蹴る)技術、テクニック」という言葉が含まれていないことです。
小林隼人選手はあるインタビューでこんなコメントを残しています。
「フットゴルフはキックから始まって、日本代表に上がるくらいまではマネジメントやメンタルといったゴルフの知識が大切です。それが成熟してさらに上を目指そうと思ったら、また強さや軌道、飛距離といったサッカー技術に戻ってくる。頭の中はゴルフじゃないといけないけど、最後はちゃんと蹴れる人、球をコントロールできる人が強くなれる気がします。」
この小林選手のコメントを読み解いていくと、フットゴルフには、スコアを伸ばし、勝つための3つのステップがあるということが分かります。
ステップ1:(自分の狙い通りに)ボールが蹴れること
ステップ2:規定打数(PAR)に対してのスコアのまとめ方、伸ばし方を考える力があり、スコアをまとめ、伸ばすための気持ちのコントロールが出来ること
ステップ3:ステップ2をさらに高い次元で発揮出来るようにするための技術の向上
いわば「技術」→「考える力や気持ちの持ち方、作り方」→「技術」というサイクルです。
これらはそれぞれ全く別の課題として存在しているわけではなく、ある段階では複雑に絡み合っているものかもしれませんし、ひょっとしたらステップ2とステップ3は無限ループにように行ったり来たりを繰り返していくものかもしれません。上を目指せば目指すほど、そしてトップに辿り着いたとしてもトップであり続けるためには同様に絶え間ない努力と進化が必要なのだとも言えるでしょう。
小林選手のこのコメント自体は日本と世界の差について直接語られたものではなく、個々の選手が上達する、強くなるためのポイントが述べられたものであると思います。
多少、いやかなり強引ではあるかもしれませんが、このサイクルを「日本フットゴルフ界や選手の皆さんが進む歩み」に当てはめてみるとしたらどうなるでしょう?
ここに世界のトップとの比較から見た当時の日本フットゴルフ界の立ち位置を見出したように感じます。
選手の皆さんや松浦会長のお話を踏まえてこの3つのステップを考える時、日本代表、引いては日本フットゴルフ界はこの時「ステップ2」のところにいたのではないか、という仮説が浮かびます。
仮に世界のトップが「ステップ3」のところにあるとしたら、日本はまだまだじゃないか、という声があるかもしれませんが、裏を返せばここまでの懸命な歩みによって「ステップ2」まで進んできたのだという前向きな見方をするべきです。そして「ステップ2」のマネジメントやメンタルをさらに極めた頃に自然と「ステップ3」に進み、そんな洗練された能力がスコアに現れていくことでしょう。
そしてこの先ステップ3に進み、世界のトップを目指すためのヒントは、マティアス・ペローネ選手などトップ3選手について語られた彼らの凄さであり、世界との「差」について選手の皆さんから語られたコメントの中に隠されていると思います。
アルゼンチン大会の時よりもさらにはっきりとした道標が見つかったのではないでしょうか。
日本国内において普段からゴルフのグリーンの上を通すようなパットの繊細さが求められるコースでプレーできる環境はまだ遠く、ワールドカップ本番のようなプレー機会を得ることはまだまだ難しいのは間違いありません。
大塚選手や安村選手が語る「攻めるメンタル」や「守るメンタル」を養うには、普段のプレー環境がより高いレベルでより厳しいものになっていく必要があり、国内の環境をすぐに変えられるものではなく、そして選手の皆さんや日本フットゴルフ協会の力だけでは得られないものかもしれません。
前に進むため、強くなるためにそれでも何か出来ることはないだろうか。
きっとこのワールドカップモロッコ大会を経験した選手や関係者の皆さまはこんな気持ちを抱いて2018年を終えたことでしょう。
冒頭のこちらの写真。
二人の視界に移る曇り空は日本フットゴルフの将来が表されているようです。曇ったままか、晴れ渡る日がいつか訪れるのか。
日本フットゴルフ界、そして選手たちの戦いはその後も続いていきます。
次回はワールドカップモロッコ大会後の日本代表と日本フットゴルフ界の動きを追います。
どうぞお楽しみに!!