700マガジン
フットゴルフワールドカップ ~その1~
2021.10.11
「2021年9月22日」
この日、1年の延期を経てセブンハンドレッドクラブでアジア初のフットゴルフワールドカップが開幕を迎える・・・はずでした。
そんな夢と希望の舞台は未だ猛威を振るう新型コロナウィルスの影響により「中止」という悲しく残念な道を辿ることになります。
フットゴルフをこれから始める皆さんや初心者の皆さんはフットゴルフにワールドカップがあることすら知らない方も多いのではないでしょうか。
2012年に第1回ハンガリー大会で幕を開け、日本で第4回大会が開催される予定だったフットゴルフワールドカップ。
日本代表チームは過去に2016年第2回アルゼンチン大会、2018年第3回モロッコ大会に出場を果たしました。
ワールドカップ2016アルゼンチン大会日本代表
ワールドカップ2018モロッコ大会日本代表
今回のフットゴルフマガジンは、そんな節目の日を迎え、ワールドカップに思いを寄せるべくフットゴルフワールドカップについて取り上げることにいたしました。
過去の大会に出場した選手の皆さま、そして日本大会に初出場を目指していた選手の皆さま、さらに日本フットゴルフ協会会長からの貴重な生の声や画像を交え、ワールドカップを通したフットゴルフの現在、過去、未来を語りつくします。
そこには熱い感動秘話が満載。ぜひご覧ください!!
第1回目となる今回は、「フットゴルフの創成期」 初めての日本代表チームの誕生とその激闘をお届けします。
フットゴルフというスポーツは2009年にオランダでルール化され正式に産声を上げ、国際フットゴルフ連盟が2012年に設立され、同年第1回ワールドカップをハンガリーで開催。
以降、急速に世界に広がりを見せています。
日本では2014年に日本フットゴルフ協会が創設され、日本におけるフットゴルフの歴史が始まります。
この頃はまだフットゴルフの環境は今ほど整っておらず、「手探りで(日本フットゴルフ協会松浦新平会長)」と振り返る状態で競技の普及のための大会を開催していきます。後のフットゴルフ日本代表選手たちもそれぞれのきっかけでフットゴルフとの出会いを迎えます。そうした中、2015年1月には国際フットゴルフ連盟(FIFG)に正式加盟。世界大会への参加の道が開けます。フットゴルフの普及を図りつつも「選手たちがフットゴルフを競技として真剣に目指せる場所を作りたい(松浦会長)」との思いから、国際大会への「日本代表チーム」としての選手の派遣を決意します。
2015年3月~5月に開催の「フットゴルフジャパンオープン」。4戦で争われた大会の上位6名が日本代表候補、そしてそのうち4名が同年6月5日~7日の3日間オランダで開催される国際大会「キャピタルカップ」に日本代表として派遣されることになりました。
ここに初のフットゴルフ日本代表が誕生します。
たった6名の日本代表、伝説の”オリジナル6”です。
“オリジナル6”メンバー
左から田中雄太選手、鈴木秀成選手、桑田寛之選手、冨澤和未選手、新井 晋選手、コージャ今村選手
ここにはひとつのドラマが。
「私は最終戦終了時、6位でした。ところが急遽6名連れていく事が決定し、崖っぷちから選出していただきました。今でも思うのがもしここで自分が代表に入っていなかったら、全く違う人生を歩んでいたかもしれないと思えるほどに出場した事で人生が変わった瞬間でした。(鈴木秀成選手/2016年・2018年ワールドカップ出場)」
初の国際試合に大いなる野望を抱いて臨んだ選手たち。しかし、そこで待ち受けていたのは想像を超える「世界との差」でした。
選手たちは語ります。
「初国際大会で外国の選手のキックの質に驚愕しました・・・ ただただ思いっきり蹴って強弱だけに重点をおいて蹴っていたパット、その感覚が一掃されました!ゴルフと同じで思いきり振らない、ラインを読むという奥深さをここにきて知りました。またちゃんと転がりやすいボールを選んで使用するということも知りました!」 (冨澤和未選手/2016年・2018年ワールドカップ出場)
「当時はフットゴルフを始めて僅か3か月で日本代表になり、右も左もわからないままオランダへ乗り込みました。キャピタルカップの会場で初めて日の丸のついたユニフォームに袖を通したときの感動は今も忘れられません。現地で戦ってきた印象としては、「フットゴルフ」というスポーツの経験値の差が本当に大きかったなと感じました。」 (田中雄太選手/2016・2018年ワールドカップ出場)
「大会初日の1打目、今でも鮮明に覚えてますが極度の緊張から右の林に打ち込んでしまいました。それはもう散々なデビュー1打目でした。それとプレースタイルでいうと殆どの選手がリスクの高くなるインステップキックを不必要に多用しないこと、パッティングスタイルがインサイドだけでなく、つま先で蹴る事などこんなにも違うのかと驚愕しました。また使用しているボールも私たち日本人選手が使用していたのは3000円程度でどこにでもある縫いボールでしたが、海外の選手はサーマルボンディング 仕様の〝よく転がるボール〟を所持していました。しかもその時の最先端のサーマルボンディング のボールではなく2010年にブレ球として話題になったジャブラニやスピードセルを使用していました。その時はもちろんボールの種類も名前も分かりませんでしたが転がす事で距離を出していくと言う競技特性をよく理解したチョイスをしていたんですね。」 (鈴木秀成選手/2016年・2018年ワールドカップ出場)
サッカーボール 右:ジャブラニ 左:スピードセル ※現在はメーカーからの正式販売は終了しています
「大会規模、参加者数、コースはもちろん、蹴り方、使っているボール、空気圧などまさに別世界… 当時日本の大会は1日でしたが、キャピタルカップは練習日1日を含めると4日間の大会。気持ちが昂っている6人は練習日から全力で全ホール蹴っていました。結果、大会途中でケガをしてしまう選手がいました。今でこそ複数日大会への臨み方は経験によって、海外の国際大会では要所要所でのキック、各ホールのボール置所そして情報収集(メモや写真)、特にカップ周りのチェックなどは経験値によって身に付きました。同じホテルに宿泊していたイギリス人にフットゴルフ始めて何年かと聞くと「2years」だと。ほとんど変わらないと思ったら、濃さが違いました。当時の日本は月1回のジャパンオープンのみ。彼らは2週間に1度はプレーしていると。」 (新井 晋選手/2016年・2018年ワールドカップ出場)
「日本代表選考会をトップで通過し初代フットゴルフ日本代表に選出頂いた時は本当に嬉しかったです。また国内での大会を通じて少なからず自信もある状態で初めての世界大会に出場しました。世界各国からトッププレイヤーが集結し、その当時日本では考えられない規模の人数での大会でした。そしていざ大会が始まると早速このスポーツに対して自分達がまだまだ無知であることを痛感させられました。カップまわりの繊細さへの対応力、ゴルフ同様マネジメントの重要性、複数日戦い切る力、そもそも使用するマイボールの性能(2000円を切る最安ボールを使っているのは私だけで、皆公式試合球を使用)どれをとっても世界と大きな差があることを身に染みて感じました。」(桑田寛之選手/2016年・2018年ワールドカップ出場)
まさに「木っ端微塵になって(松浦会長)」帰国した日本代表選手たち。
ただ、ここで得たかけがえのない経験が6名の選手たちはもちろん、日本のフットゴルフの成長を促すことになります。
「正直キックの飛距離や精度は日本人選手は決して負けていませんでしたが、一打一打の正しい選択ができていなかったように感じました。1大会戦ってきた中で、世界でも通用する部分、しない部分を発見、経験できたのは大きかったと思います。」(田中雄太選手)
「キャピタルカップはもちろん惨敗でしたが、そこから半年後にアルゼンチンでのW杯が待っていたので吸収した事を半年で鍛錬してやってやろうと言う気持ちは強かったですね。つま先での蹴るパッティングの練習やフットゴルフならではのドロップ回転をかけるような縦回転のティーキックやアプローチの練習など本当にフットゴルフで必要になるキックをとにかく練習してW杯への準備をしました。」(鈴木秀成選手)
「大会結果は惨敗で、優勝選手とは3日間で28打差・・・ 大会だけでは世界に追い付けない、もっと上手くなりたいと思い、フットゴルフの練習を始めるきっかけになりました。帰国後、フットゴルフにワールドカップがあること、そしてそのワールドカップの日本代表を決める選考会が始まるとアナウンスがありました。キャピタルカップでの悔しさを晴らしたい、競技は違えど夢の舞台に出場できるチャンス。是が非でも選ばれたい強い気持ちに駆られました。」(新井 晋選手)
「それでも世界選抜チームvsオランダ選抜チームでの特別イベントに私も参戦させてもらい、トップ選手とペアを組みラウンドできたこと、そこで自分も少なからず思うようなプレーができたことはその後のプレーにおいてもとても貴重な経験となりました!日本に帰るとプレースタイルの見直し、自分にあうボール探し、パッティングスタイルの研究等、いろいろ国内でできることを試行錯誤で取り組みました。また世界大会を通じて知り合った海外選手からも沢山アドバイスをもらい、少しずつ自分のフットゴルフのプレースタイルの確立ができはじめました。」(桑田寛之選手)
そしてもうひとつ、フットゴルフというスポーツの持つ尊さ、素晴らしさに触れていただいたメッセージが。
「フットゴルフは純粋に自分のその時のベストを出すことで勝負するスポーツ。サッカーには相手の良さを消すような戦い方もひとつの側面として存在するが、フットゴルフは相手を蹴落とすのではなく、高い山をみんなで登っているイメージ。自分がベストの結果を出せても相手がもっといい結果を出せば負けるもの。だから負けた悔しさはあるが、相手の最高のプレーは「お前すごいな!!」と心からたたえることが出来る。憎み合うのではなく、みんな好きになれる。敵味方関係なく、ひとつになれる瞬間がある。この大会でそうした瞬間を見ることが出来た。素晴らしい時間だった。」(コージャ今村選手/2016年ワールドカップ出場)
「英語も喋れずオランダへ旅立ち、いざ大会が始まっても喋れないことでコミュニケーションが取れなかったのが一番大変でした。でもいいプレーの時に一緒になって喜び合うことが日本でプレーしていたときとは何十倍も違ってとても素晴らしい空間に思えました!国際交流をスポーツの頂上決戦の場で体験しさらにフットゴルフにのめり込んでいくきっかけになったのだと思います!」(冨澤和未選手)
半年後に迫る初の夢の舞台、ワールドカップアルゼンチン大会。
選手たちは新たな歩みを始めます。
次回は2016年ワールドカップ出場を賭けた国内での激闘を選手たちの貴重な声を中心にお届けします。
次回の配信もお楽しみに!!